用語集
レセプター(受容体)
receptor
細胞の外からきた情報を受け取る働きを持つ体内の物質。レセプターが刺激や物質の情報を受け取り、どのようなものであるかを判断することで、細胞内の様々な反応が引き起こされる。リセプターともいわれる。
リガンド
ligand
細胞の表面に存在している特定のレセプターに対してのみ結合する物質。リガンドはレセプターの特定の部位に結合して、高い親和性を示す。体内に存在するリガンドとしては、ホルモンや神経伝達物質、細胞増殖因子などが挙げられる。
TLR(Toll様受容体)
Toll-like receptor
動物の細胞表面にある受容体タンパク質。外部から侵入してきた病原体を感知することで、自然免疫機能を作動させる。
NLR(NOD様受容体)
Nucleotide binding oligomerization domain-like receptor
30を超える種類がある細胞内タンパク質で、そのなかの数種類が病原微生物を認識し、自然免疫や炎症に関わっている。NLRが変異して免疫応答の異常が起こると、自己炎症疾患などの免疫疾患を引き起こす。
RIG(RIG様受容体)
Retinoc acid inducible gene-like receptor:RIR
インフルエンザやC型肝炎などのウイルスを認識する分子群。細胞質内でウイルスの認識を司る。
マクロファージ(MΦ)
Macrophge
白血球の1種で、死んだ細胞や体内に生じた変異物質、侵入した細菌などを捕食して消化する。体内の清掃屋としての役割を果たしながら、免疫機能の中心的役割を担っている。大食細胞、大食胞、組織球ともよばれる。
B細胞(ビー細胞)
B cell、B lymphocyte
骨髄(Bone marrow)で成熟することからB細胞と名付けられたリンパ球の一種。病原体が体内に侵入するとヘルパーT細胞からの指令を受けて、病原体に対応する抗体をつくる。抗体は体内に入り込んだ異物の活性を中和し、さらにマクロファージの捕食も助ける働きもある。
T細胞(ティー細胞)
T cell
骨髄で産生された細胞が、胸腺で分化・成熟したリンパ球の一種。T細胞の表面には外から入ってきた異物を認識する受容体があり、異物を認識すると排除するために免疫反応を開始。体内のリンパ球の70~80%を占め、免疫機能の司令塔とも言える細胞。
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
natural killer cell
自然免疫として働くリンパ球の一種。がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する、全身のパトロール細胞。自然免疫の重要な役割を担い、血液中のリンパ球の10~30%を占めている。
NKT細胞(ナチュラルキラーティー細胞)
natural killer T cell
T細胞の中でも、特にT細胞とNK細胞両方の特徴を合わせ持っているもので、T細胞、B細胞、NK細胞に続く第4のリンパ球と呼ばれる。先天的に備わっている自然免疫系と、生後獲得していく獲得免疫系の両方を同時に活性化する。NKT細胞はT細胞のわずか0.1%しか存在しない。
Th17細胞(ティーエイチ17細胞)
T helper 17cell
近年新たに発見された、ヘルパーT細胞のサブセットのひとつ。炎症生サイトカインである物質を産生して、炎症を誘導する。クローン病や関節リウマチ、アレルギーに関与することが報告されており、注目を集めている。
Th1細胞(ティーエイチ1細胞)
Th1 cell
ヘルパーT細胞の亜群のひとつで、細菌やウイルスなどの異物に対して反応する。B細胞に細菌の情報を伝え、抗体を作るよう指示を出す。血流に入り、マクロファージの活性化や炎症反応を引き起こす。
また、亜群のひとつであるTh2細胞は花粉やダニ・ホコリなどのアレルゲンに対して反応する。B細胞に抗体を作るよう指示を出すが、免疫バランスが崩れ、Th2細胞が過剰になるとアレルギー症状が出る。
通常、Th1細胞とTh2細胞は、お互いの機能を抑制しあってバランスをとっている。
Treg細胞(ティーレグ細胞(制御性T細胞))
regulatori T cell
免疫抑制を司るT細胞の一種。免疫が過剰になると細胞や組織にも害が及ぼされ、自己免疫疾患やアレルギー疾患を引き起こしてしまうため、Treg細胞が過剰な免疫応答を抑制する。
CTL細胞(細胞傷害性T細胞)
cytotoxic T lymphocyte
T細胞の一種で、ウイルス感染細胞やがん細胞などを認識して破壊する働きを持つ。以前はキラーT細胞とよばれていたが、近年は CTL細胞を呼ばれることが多い。
IL-21(インターロイキン21)
Unterleukin21
CD4+T細胞やNKT細胞によって産生されるタンパク質。リンパ球を増殖させたり、NK細胞による細胞傷害の促進、B細胞への分化の促進など、様々な効果をもたらす。その他、抗腫瘍活性や自己免疫疾患にも関与しているといわれている。
アジュバンド作用
adjuvant
免疫反応を行う免疫細胞の増殖を助けたり、免疫細胞を活性化する働きを持つ。免疫細胞ががん細胞などを強力に殺せるようにするための作用のこと。
リソソーム
lysosome
細胞器官のひとつ。内部に含まれている酵素を用いることで、細胞外から取り入れられた物質の消化や分解を進める。細胞が障害を受けた際は、細胞自身も消化する自己融解作用も持っているため、細胞に死をもたらす器官ともいえる。
エンドソーム
endosome
細胞内に取り込まれた物質の選別・分解・再利用などを制御する小胞。取り込まれた一部の分子は再利用され、不要な分子はリソソームと融合することで分解される。
インターロイキン
Interleukin
白血球によって分泌され、細胞間のコミュニケーション機能を果たすタンパク質。現在30種類以上が知られており、免疫系の機能の多くにインターロイキン(IL)が関係している。それぞれ異なる機能を持っている。
- IL-1:マクロファージなどによって分泌され、リンパ球の増殖や機能を活性化。
- IL-2:T細胞によって産生。T細胞やNK細胞、B細胞を増殖させる。がんの免疫療法に用いられる。
- IL-3:T細胞によって分泌され、骨髄幹細胞を刺激する。
- IL-4:B細胞の増殖とT細胞・肥満細胞の分化に関与。アレルギー反応で重要。
- IL-6:表皮細胞の増殖や、血小板生成の促進、肝に急性期反応物質などを産生。
- IL-7:B細胞、T細胞、NK細胞の生存、分化、ホメオスタシスに関与。
- IL-8:好中球の走化性を誘導する。
- IL-9:肥満細胞を刺激する・
- IL-10:樹状細胞を抑制することによってTh1サイトカイン産生を阻害。
- IL-11:急性期タンパク質を産生。
- IL-12:NK細胞を刺激し、Th1への分化を誘導。
- IL-13:B細胞の増殖と分化を刺激。Th1細胞を阻害して、マクロファージの炎症性サイトカイン産生を促進。
- IL-14:活性化B細胞の増殖誘導や、B細胞の抗体生産抑制。
- IL-15:キラーT細胞の活性化。B細胞の増殖と分化を誘導・
- IL-17:炎症性サイトカインの産生を誘導。
- IL-18:インターフェロンγの産生を誘導。
インターフェロン
Interferon IFN
ウイルスなどの病原体や腫瘍細胞などの異物に反応して細胞が分泌するタンパク質。ウイルスの増殖阻止や細胞増殖の抑制、炎症の調節などに働く。大きく分けて、α、β、γの3種類がある。
ペプチド
peptide
アミノ酸が数個つながったもので、アミノ酸とタンパク質の中間の性質を持つ。ペプチドは元となるタンパク質や食品の種類によって働きが異なるため、魚類や牛乳など、由来しているものにちなんだ名前がつけられる。
オリゴペプチド
Oligopeptide
ペプチドの一種で、ジペプチド、トリペプチドなどを含む。アミノ酸が10個以下のペプチドをオリゴペプチドといい、現在、600以上の種類があることが知られている。
樹状細胞
Dendritic cell
哺乳類の免疫系の一部を担っている免疫細胞の一種。名前の通り、樹木ような状態になっており、体の中のあらゆる場所に分布している。体内や体の表面で異物を発見すると情報を取り込み、リンパ球に攻撃するように指示を出す免疫細胞の司令塔。
ミクログリア細胞(小膠細胞)
Microglia
中枢神経系グリア細胞のひとつで、中枢の免疫担当細胞として知られている。マクロファージのような神経食現象を持っており、神経組織が病気になるとダメージを受けた細胞や細胞外タンパク質を食べ、修復を行う。
ランゲルハンス細胞
Langerhans cell
表皮に存在している樹状細胞のひとつ。表皮全体の細胞数の2~5%を占めており、外部から侵入する細菌やウイルス、化学物質、カビなどの刺激を常に脳に伝達。皮膚の均衡を保つセンサー的な役目を担っている。老化した皮膚はランゲルハンス細胞の数が減少し、異物の侵入を許すことが増えてしまう。
クッパー細胞
Kupffer cell
肝臓を構成する組織のひとつで、マクロファージの一種。異物や腸管から発生した毒素を取り込み、処理するなど、自然免疫の機能が発達している。
上皮細胞
体を覆う皮膚や、臓器の粘膜など上皮組織を形成している細胞のこと。体の様々な部分に存在しており、その性質も様々。
線維芽細胞
fibroblast
コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸など、真皮の成分を作り出す細胞。炎症や損傷が起こると、線維芽細胞そのものが増え、ダメージ部分の修復を行う。
ケラチノサイト(角化細胞)
皮膚を構成する主要な細胞のひとつで、表皮の角化を司る。肌の基底層で生まれた肌細胞は、約2週間で角片(アカ)となって剥がれ落ちる。角化細胞は表皮の約80%を占め、水分保持やバリア機能の維持に重要な役割を果たしている。
骨芽細胞
osteoblast
骨組織の表面に存在しており、新しい骨を作る働きを持つ細胞。骨の素となるコラーゲンなどのタンパク質を分泌して、骨の組織を形成。女性ホルモンのエストロゲンが骨芽細胞を刺激することが知られており、閉経後の女性に骨粗鬆症が多くなるのはエストロゲンの分泌が減少するためといわれている。
スポア(芽胞)
spore
一部の細菌が、増殖に適さない環境になった時につくる耐久性の高い細胞構造。芯部にはDNAやリボソーム、酵素などが含まれている。休眠状態を維持しており、増殖に適した環境になると発芽して再び菌体に戻る。
MDP(ムラミルジペプチド)
Muramyl dipeptide
微生物の周りにある細胞壁からつくられるペプチド。グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方を構成する。
ペプチドグリカン
Peptidoglycan
ペプチドと糖が組み合わさった化合物。細菌の細胞壁の構成成分であるムレインは、ペプチドグリカンの鎖が主体となっている。細胞に耐久性を与え、強度を保持する。
フラジェリン
flagellin
細菌の鞭毛を構成するタンパク質の一種。鞭毛の主成分で、有鞭毛型細菌の菌体には多量に含まれる。
LPS(リポ多糖)
Lipopolysaccharide
脂肪酸に多糖が結合した高分子。免疫ビタミンとも呼ばれ、体内のマクロファージを活性化して病気の予防に役立つことが知られている。玄米など、身近な食べ物からでも摂取できる。
TNF-α(腫瘍壊死因子)
Tumor Necroisis Factor
マクロファージによって産生されるタンパク質で、固形がんに対して出血性の壊死を起こさせる働きがある。しかし、通常より増えすぎてしまうと、関節の痛みや腫れ、関節破壊を引き起こしてしまう。
パーネット細胞
小腸に存在し、微生物に対する防御因子を持つ細胞。好中球に似た働きを持っており、小腸での自然免疫に関与する。
グラム陰性菌
Gram-negative bacteria
細菌をグラム染色した際に、脱色される細菌の総称。プロテウス菌や大腸菌、肺炎桿菌などがグラム陰性菌に含まれる。
グラム陽性菌
Gram-positive bacteria
細菌をグラム染色した際に、青や紫に染色される細菌の総称。ブドウ球菌や連鎖球菌、肺炎球菌などがグラム陽性菌に含まれる。
シャペロン(分子シャペロン)
chaperone
タンパク質はアミノ酸がたたまれ立体構造となったもので、このたたまれ方をフォールディングと呼ぶ。シャペロンはタンパク質の一種で、細胞内できちんとフォールディングが行われ、正常な構造・機能を獲得するのを助ける働きを持つ。
プラスミド
plasmid
大腸菌などの細菌の核外に存在して、細胞分裂の際に引き継がれるDNA分子の総称。プラスミドは通常の生命活動に必要な遺伝子はなく、細胞が特殊な環境に置かれた時に独自に働き、遺伝情報を伝える。
オルガネラ(細胞小器官)
organelle
細胞の内部に存在する構造体のこと。核やミトコンドリア、ゴルジ体など、細胞内で重要な機能を果たしている。
オートファジー
Autophagy
細胞が持つ、細胞内のタンパク質を分解する仕組み。自食とも呼ばれる。細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、タンパク質のリサイクルを行ったり、細胞内に侵入した病原微生物を排除するなどして、体の恒常性を維持している。
アポトーシス
apoptosis
細胞の死に方のひとつ。細胞の自殺ともいわれ、個体をより良い状態に保つために、積極的に引き起こされている。
ネクローシス(壊死)
Necrosis
自己融解によって生物の組織の一部が死んでいくこと。プログラムされた死であるアポトーシスとは異なり、何らかの原因で破壊された結果死ぬことを指す。
オートファゴソーム
autophagosome
細胞がオートファジーする過程でつくられる袋状の構造。細胞小器官やタンパク質を囲い込んだ後に、リソソームと融合して、中に囲い込んだものの消化を行う。
エンドトキシン(内毒素)
endotoxin
グラム陰性菌の細胞壁の成分。積極的に分泌されない毒素だが、微量でも血中に入ることで発熱などの様々な症状を引き起こす。
リアルタイムPCR
Real-time PCR
遺伝子発現解析のような定量解析に用いられる方法。迅速に結果が得られるほか、正確に定量が行えるなどの利点がある。
抗原
antigen
免疫細胞のレセプターに結合して、免疫反応を引き起こす物質の総称。抗体やリンパ球の働きで生体内から除去される。
抗体
antibody
B細胞が産生する糖たんぱく分子で、特定の抗原に対して働く。1種類のB細胞は1種類の抗体しか作れないため、人の体内には数百万~数億種類ものB細胞がそれぞれ異なる抗体を作り、様々な抗原に対処している。
IgE(免疫グロブリンE)
Immunoglobulin E
哺乳類のみに存在する糖タンパク。アレルギー疾患を持つ人の血清中では濃度が上昇することがわかっており、アレルギー反応において中心的な役割を果たす分子のひとつとして数えられている。
IgA(免疫グロブリンA)
Immunoglobulin A
哺乳類および鳥類に存在する免疫グロブリンの一種。分泌型IgAは初乳に含有され、新生児の消化管を細菌・ウイルス感染から守る働きを持つ。
IgG(免疫グロブリンG)
Immunoglobulin G
免疫グロブリンの中で最も数が多いもの。人の血清の免疫グロブリンの約75~80%を占める。細菌やウイルスなどと結合し、病原体の動きを止める。
IgM(免疫グロブリンM)
Immunoglobulin M
B細胞に存在する抗体のひとつ。人の持つ中では最もサイズが大きな抗体。細菌やウイルスに感染した際、一番最初につくられる。無脊椎動物には見られず、軟骨魚類行こうの脊椎動物で見つかっている。
IgD(免疫グロブリンD)
Immunoglobulin D
免疫グロブリンMとともに、B細胞表面に存在する抗体タンパク質。